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オーランチオキトリウム
オーランチオキトリウムは、ラビリンチュラ類に属する従属栄養藻類で、有機物によって増殖するのが特徴です。そして光合成を必要としないので、光がなくても炭化水素オイルを生産します。
有望株の発見
2010年、当研究室において、国内株の高価値炭化水素オイル「スクアレン」産生株のスクリーニング法を開発し、Aurantiochytrium sp.18W-13a株を発見しました。
これは、培養体積当たりのスクアレン生産量が最も多く、これまで報告のあったスクアレン産生性微生物の生産量の数百倍に及ぶものです。
オーランチオキトリウムのスクリーニング結果
Strain | Lipid content in dry cells(%) |
Lipid composition(%) | ||
squalene | triglyceride | Polar lipids | ||
SR21 | 17.1 | 0.1 | 37.6 | 63.3 |
4W-1b | 25.2 | 0.2 | 84.2 | 15.7 |
18W-13a | 24.8±1.4 | 69.0±2.7 | 15.1±7 | 15.9±1.6 |
9F-4a | 19.5 | 0.3 | 56.7 | 46.6 |
W3-5a | 20.1 | 1.1 | 46.6 | 52.4 |
W1-7a | 27 | 3 | 32 | 65 |
オイル生産効率は世界最高
Aurantiochytrium sp.18W-13a株の炭化水素オイル生産量は、乾燥重量当たり約20%。
これは、同じく炭化水素オイルを生産するボトリオコッカスの1/3の生産量ですが、倍加時間は3時間(生産効率の高い25℃の場合)で、ボトリオコッカス(25℃で6日)の48倍の速さです。
つまり生産効率は、ボトリオコッカスの16倍(48/3倍)となり、これは世界最高の効率です。
18w-13aの4~12日目のバイオマス量とスクアレンの含量
4日目がバイオマス量、スクアレン含量の双方で最も高く、
スクアレン濃度はバイオマスあたりで20%、収量は約1.3g/Lとなる。
18w-13aの増殖曲線
増殖は速く、4日で静止期にはいる。
すぐには死滅しない。
生産効率の高いオーランチオキトリウムの培養株の発見は、
-炭化水素オイル生産効率一桁増進の可能性を高めたこと
-有機廃水処理プロセスと藻類バイオマス生産の統合化という新たな展開
へと導きました。
高付加価値オイル「スクアレン」を生産


スクアレンは、抗酸化作用、鎮痛作用、免疫促進作用、殺菌作用、浸透作用、細胞賦活作用、保湿効果があるとされ、化粧品や健康サプリメント、インフルエンザワクチンなどに用いられています。
現在、スクアレンは絶滅危惧種である深海サメから抽出されており、オーランチオキトリウムから大量に生産されるようになれば、新たなバイオ産業の創出につながると考えています。